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空想デイズ

期間限定(?)幻水ティアクライスのプレイメモ&呟きブログ。 女性向けの腐った視点が含まれますのでご注意下さい。 ロベルト贔屓。

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言葉を、熱を/ツァウビュク

久しぶりになってしまいましたが生きています!元気です!
ネットはとりあえず今日は快調。明日も快調だったら・・・例のものを企画したい。

あと拍手とか、返信不要のメッセージとかありがとうございます!

ひとまず久しぶりのツァウビュクです!
リクエストいただいていた「甘めのもの」ということで。
とりあえずうちの二人がいまだくっついてはいないので、どこまで甘さを出せるかと思いつつ・・・。

邸の中が、いつもより慌しいなとは、思っていた。
すれ違う女中がビュクセに会釈をして、優雅さは失わないまま、足早に傍らをすり抜ける。急いではいるが足音を立てないので、なんとなく感心して、その行く先を見送った。次の部屋から出て来た別の女中と、何やら打ち合わせながら奥へと消えて行く。
ビュクセはその広大の邸の隅々を、異常がないかとひとつひとつ確認していった。日課となった朝の業務の一つだ。
見回りを終えると、ビュクセは執務室の戸を叩いた。すぐに中から声が返る。ビュクセはゆっくりと扉を開けて、静かに中へ入った。
「おはよう、ビュクセ君!」
ビュクセの主は早くも執務机の前に座って書類に目を通していたが、朝の挨拶の言葉と同時に立ち上がった。
「……おはようございます」
「今日はまず君に渡したいものがあるんだ。ひとまずそこに」
ツァウベルンに視線でソファを示されて、ビュクセは大人しくそこへ腰掛けた。が、続いてツァウベルンが、ビュクセの向かいではなくすぐ隣に座ったので、とっさに少し腰をずらした。ツァウベルンは不満げに肩を竦めたが、何も言わなかった。
「手を出して」
何が出てくるのかわからず、ビュクセはツァウベルンの顔を見たが、彼は微笑むばかりだ。仕方なくそっと、手を広げて差し出す。
「はい、これ」
そう言って、手のひらに置かれた小さな箱。見下ろして、ビュクセは小さく首を傾げた。
渡したいものと言うからてっきり仕事に必要なものかと思ったが、どうも違う気がする。そんなものに、わざわざリボンをかけたりはしないだろう。
「眺めていないで、開けてごらん」
手の上に箱を載せたまま思案していたビュクセに、苦笑を浮かべてツァウベルンが言った。確かに、それが何なのかは、開けてみなければわからない。ビュクセはゆっくりとリボンを解き、小箱を開けて中を覗いた。そしてさらに頭を悩ませる。
柔らかな綿の上に、小振りの、鈍く光る赤い石。
「……これ、は?」
「小さいけれど綺麗だろう! 本当は、指輪にして贈りたかったのだけれど、銃を扱うのに邪魔になるといけないと思ってね。ペンダントにするかブローチにでもするか、なんでもいい、君に任せるよ。そうだね、君がそうやって肌身離さず持っている銃に、嵌め込んでみるのもいいかもしれないね」
矢継ぎ早に話されたが、そもそも知りたかった答えと違う。ようやく途切れた言葉の後に、改めて問い直した。
「何故、俺に?」
「君に贈り物をしてはいけないかい?」
「……受け取る理由が、ない」
「ああ、そうか。まずそれを話さなければならなかったね!」
ようやくツァウベルンがぽんと手を打って、ビュクセは小さく安堵の息を吐いた。
が、安心するのはまだ早かった。ツァウベルンからは、予想外の言葉が飛び出した。
「実はね、今日は私の誕生日なんだ」
「……は?」
つい、間の抜けた声で問い返した。
誕生日。初耳だ。しかも、前の会話とどう繋がるのか、さっぱりわからない。
「知らなかった」
ひとまず、そう正直に申告した。ツァウベルンは気分を害した様子もなく、そうだろうね、とにこやかに頷いた。
「話したことはなかったからね。ちなみに、今夜はこの邸で、私の誕生日を祝う晩餐会が開かれる予定だ」
「……聞いていない」
今度は僅かな非難の色を覗かせて言ったが、ツァウベルンは意に介さず、相変わらず楽しげに微笑んでいる。
「うん、言ってないからね」
「警備体制の見直しを……」
「そんなものは警備のものに任せればいいさ。警護隊長の君の本来の役割は私の警護だ、というわけで晩餐会には君にも同席してもらうよ」
「…………」
驚きや呆れを通り越し、ビュクセは言葉を失くした。
「まあ、今夜は主に身内と親しい友人だけの気軽なパーティだ。そう気負うこともないだろう。もちろん万が一のことを考えて武器の携帯は許可するけれど、銃は服の中に隠せるような小型のものにしてくれ。ご婦人方が怯えるといけないからね。それから君の礼服も用意した。これからも必要になるだろうしね。職務用ということで現物支給だ、別に給金から天引きしたりはしないから心配しないでくれたまえ。何か質問は?」
急に実務的な口調になって、ツァウベルンが捲し立てた。言葉の意味を拾い集めながら、ビュクセは必死に頭の中で整理をして、なんとか声を押し出した。
「む、無理だ……」
「ビュクセ君」
ちらりと口元に笑みを戻して、ひどく柔らかくツァウベルンが名を呼んだ。
「これは任務だよ」
「……了解」
厳しくはないが、断固とした口調で命じられ、ビュクセは仕方なく頷いた。もっともなことだ。人が多くて華やいだ場は苦手だ、なんて我侭が通じるはずもない。
第一、外されたなら外されたで、きっと落ち着かない。
ツァウベルンはすぐに満足げに笑って、いい子だね、などと呟いた。
「そんな素直な君に、これはプレゼントだよ」
そう言って、ビュクセの手の中の小さな箱を指し示す。ビュクセもつい忘れかけていた、赤い宝石。
けれど、その意図するところは、よくわからないままだ。ビュクセは深く考えて、それから自信なく、口を開いた。
「……この辺りには……もしくは、高貴な方の間では……誕生日に、その当人が、周囲の者に贈り物をする習慣が……?」
「いや、そんな風習は聞いたことがないね。逆の習慣ならあるけれど。ビュクセ君の故郷にはそんなしきたりが?」
「…………」
ひとつひとつ、言葉を探しながら訊ねたビュクセに、あっさりとツァウベルンが返した。知りたい答えはまた得られず、ビュクセは疲労を感じながらゆるく首を振った。そして、仕方なく、改めて訊ねる。
もしかしたらこの主は、わざと回りくどい話し方をして、戸惑うビュクセの反応を面白がっているのではないかと疑いながら。
「貴方は、これを、何故俺に?」
「ああ。君に贈り物をした理由かい?」
ゆっくりと投げかけた問いで、ようやく質問の意図が伝わった。
「それは君への贈り物であって、私から私自身への、記念の贈り物でもある。だから、君は気にしなくていい」
しかし、返った答えは相変わらず要領を得ない。眉間に皺を寄せたビュクセにまた、ツァウベルンが笑った。
「それともうひとつ。これで君は絶対に、私の誕生日を忘れないだろう。だって君は、自分の主の誕生日を当日になってようやく知って、反対にプレゼントまで受け取って、もちろん君自身は何も用意をしていない。これほど立場がないこともないだろうからね!」
「…………」
当然、忘れられるはずもない。憮然として黙り込むビュクセに、ツァウベルンはにやりと口角を持ち上げて、楽しげに言う。
「来年は期待しているよ! 君からの熱烈なお祝いをね!」
「……了解」
そのためだけにこの日までわざと秘密にしたのかと思うと、くだらなすぎて反論する気にもなれなかった。おそらく、邸の人間に口止めまでしたのだろう、この悪戯好きの主は。
ビュクセは溜め息をつきながら、箱の中から赤い色の石を手のひらに転がして、それからふと呟いた。
「今年の分は……」
「ん?」
「今からでも、用意できるものなら……」
「ああ、今年の分のお祝いということかい? だから君は気にしなくていいと言っているのに。……ああ、でも」
苦笑交じりのツァウベルンの声の中に、僅かに、嬉しそうな響き。何かを思いついた様子で、小首を傾げてビュクセを見た。
「望んでもいいのなら、まずは言葉を」
「ことば?」
「そう、誕生日の」
そこまで言われてビュクセはようやく、肝心な一言を伝えていないことに気がついた。改めて要求されると言葉にしづらかったが、期待のこもった目で見つめられ、ゆっくりと口を開く。
「……おめでとう、ございます」
「ありがとう、ビュクセ君」
ツァウベルンが柔らかく微笑んだ。唇を閉ざして目を伏せたビュクセに、ツァウベルンはそっと身を寄せた。
「それから、もうひとつ」
言葉だけでは足りなかったらしい欲張りな主は、次の贈り物をねだって囁いた。大人しく続く声を待つビュクセに、何も語らないままそっと口づける。
ビュクセはわずかに身を硬くしたが、それ以上を求める欲望は伺えず、重なった唇が小さく震えたから、そのぬくもりが離れるまで静かに目を閉じていた。


リクエスト「ツァウビュクで甘めのもの」でした!ありがとうございました!
甘いといえばプレゼントかなという安直な・・・というかそもそも勝手にED後で書いてしまいましたが大丈夫でしたでしょうか・・・?
キスくらいは普通にしてる(というかツァウが隙をみてしている)けどくっついてはいない、という感じのふたりにしてしまったので、甘さは控えめになってしまいましたがなんかこう・・・くだらないやりとりから、じゃれあってる感が出るといいなと思いつつ書いてみました。
あとツァウベルン的に宝石を送る→身に着けさせる→所有の証、みたいなあれです。自己満足です。
ツァウベルンは変わった人、というのを意識してネタを考えていたら本当におかしなひとになってしまった気がします。すみません。
このふたりであまり、甘さを意識して書くことがなかったので、とても新鮮で楽しかったです!
遅くなってしまいましたが、リクエスト下さった方、本当にありがとうございました!
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