ブログのタイトルが「空想デイズ」なのは、空想~というブログを別にやっているから、そのつながりで考えただけなのですが、本当は「妄想デイズ」とかの方がいいのかなと考えたりもしました。あまりに痛々しい感じなのでやめておきましたが。おかげでなんだかかわいらしい感じの名前になってしまいましたが、やっていることは常に妄想です。っていうか捏造です。
以下はもうとんでもなく捏造です。ごめんなさい。妄想してたらちょっと楽しかったので思わず書いてみてしまっただけです。アトリ×ロベルト?・・・です。
アトリ好きです。天魁星のイメージとしては実は主人公より好みだったりします。もちろん主人公も好きですが!
本当にあらかじめ謝っておきます。ごめんなさい。でも、楽しかったです(笑)
「……わかった。いつもありがとな」
「ぼくの方こそ助かってるよ。それじゃ、また何かわかったら来るから」
「――ナイ!?」
短い情報交換を終え、アトリが自分の世界へ帰ろうとした時に、その声が聞こえた。トビラへ向かう足を止め、アトリは振り返った。その声音に、何かが引っ掛かった。
「カナイ、ここにいたのか!」
「ロベルト!」
角を曲がって姿を見せた少年が、カナイを見つけて駆け寄ってくる。その容姿に、アトリは僅かに目を瞠った。カナイが彼の名を呼んだ。ロベルト……?
「……っと、客人か。悪い」
「いや、ちょうど終わったところ。じゃあな、アトリ!」
「あ……うん」
振り返って手を上げたカナイに、アトリも頷いた。
「またね、カナイ」
短く答えて、トビラに足を踏み入れる。くぐり抜けた瞬簡に振り向くと、ロベルトと呼ばれた少年の、複雑な感情を宿したまっすぐな目が、青く、残像のように浮かんで消えた。
「……なんだよ、さっきから人の顔をじっと見て」
傍らに腰掛けた彼が、気味悪げに眉を顰めた。アトリはごめんねと謝りながら、けれど口元が緩むのを抑えられなかった。彼の表情がさらに不機嫌に歪む。
「実はさ、今日、別の世界のきみに会ったんだよ」
「別の世界のオレ?」
「うん。きみとそっくりな、可愛い子だったよ」
「かわっ……お、おまえな!」
まるで自分が可愛いといわれているようなものだ。咄嗟に抗議の声を上げようとしたが、アトリの平然とした笑顔を見て、言葉を止めた。諦めて、溜め息をつく。
「ん? なに?」
「……なんでもない」
「そうだ、今度はきみも一緒に行こうよ」
「はあ?」
良い考えだと思ったけれど、アトリの提案はあっさりと拒絶された。
「別にいい。だいたい、別の世界の自分なんて、会ってどうするんだよ」
「え、会いたくない?」
「同じ顔が並んでたら気味悪いだろ」
「そうかな……。そんなことないと思うけど」
「どこが」
心底嫌そうに、彼が顔を顰める。アトリは昼間会ったばかりのもう一人の「彼」を思い出し、想像する。
「うん。両手に花、だよね」
「……バカだな、おまえ。そんな物好き、おまえくらいだぞ」
疲れたように息を吐き、彼は顔を背けた。アトリは小さく首を傾げる。
「そうかな。でも、楽しそうだよね?」
「オレは楽しくない。だいたい、顔が同じなら何でもいいのか、おまえ」
「……あれ?」
僅かに声を落とされた呟きを耳にとめて、アトリは背けられた彼の表情を覗き込むように顔を寄せた。
「もしかして、妬いてくれてるの?」
「ちがっ……! そんなわけあるか!!」
顔を真っ赤にして彼が喚く。アトリは込み上げる笑いを抑えながら、彼に謝った。
「ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだ。きみの顔は好きだけど、もちろんそれだけじゃないよ」
「っ、もういい! それ以上言うな!!」
「ねえ、じゃあきみは? 別の世界に、ぼくと同じぼくがいたら、どうする?」
「知るか! おまえみたいなバカ、他にいるわけがないだろっ!!」
怒鳴るように言って、またふいと顔を逸らす。後ろからわずかに見える耳が、まだ赤い。アトリがしばらく黙っていると、やがて、苛立ったような舌打ちの後に、彼が言った。
「……おまえみたいなバカでも、信用はしてる。だからこうやって、とんでもない戦いにも付き合ってやってんだ。おまえだからだ、バカ!」
アトリはふと、カナイの世界で見た「彼」を思い出した。トビラの内側を覗き込む、探るような目。複雑な感情。カナイの友人を疑うわけではないが、本当にカナイにとって害はないのかと心配するような……。カナイがあの世界の仲間達にどれだけ慕われているのか、彼の様子を見たら一目でわかった。強い信頼と絆。
「……うん」
アトリはゆっくりと頷く。ようやく、目の前の彼が振り向いた。青い、まっすぐな瞳が、睨むようにアトリに向けられる。
「二度と言わないからな!」
「うん、わかってる」
その目に宿る信頼に、いつも、応えられる自分でありたい。その期待を、裏切りたくはない。
きっと、カナイもそうなのだろう。
あの、青い瞳に、きっと……。