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空想デイズ

期間限定(?)幻水ティアクライスのプレイメモ&呟きブログ。 女性向けの腐った視点が含まれますのでご注意下さい。 ロベルト贔屓。

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Foolish/ツァウビュク

ようやく書けました・・・。
時間がかかったわりに、ツァウビュクっていうかただのツァウベルン+ビュクセみたいな・・・あ、それはいつものことか!

ツァウベルン加入イベントの屋上の会話で、書に触れさせるかどうかを保留にすると、結論が出るまでツァウベルンは屋上で待っててくれるんですが。
ヴェルファーのみんなは既に加入しているので、ちょっとやきもきしたんじゃないかなと。危ないからさっさと帰ってよ!みたいな。そんな説得を試みたりしてるんじゃないかなと。
それだけの話です。


視線と、押し殺した僅かな気配に気がついて、ツァウベルンは鋭く背後を振り返った。
屋上へ続く階段を上ってきた男が、静かな足取りでツァウベルンに歩み寄る。それが同郷の人間だと気づいて、ツァウベルンは笑みを作り、軽く手を上げて迎えた。
「やあ! なんだ、きみか」
ヴェルファー機関に所属、ゲシュッツの部下のビュクセという男の名を、ツァウベルンは記憶の中から引っ張り出す。たしか、狙撃の名手だとか。
「足音も立てずに現れるから少し驚いてしまったよ。私を暗殺にでも来たのかい?」
「……いや」
冗談のつもりだったのだが、ビュクセは真顔のまま首を横に振った。短い否定の言葉だが、まさか、とでも言いたげな、断固とした否定だった。
「つい、癖で……不快に思われたのなら、申しわけない」
ツァウベルンはその表情をじっと伺い、つい、感嘆の言葉をあげた。
「きみはすごくマジメな男だなあ!」
「…………」
「いや、すまない。悪い意味ではないんだ。褒めたつもりだったのだけれど」
難しい顔をして口を閉じたビュクセに、気分を害したかとツァウベルンが言い足した。けれどビュクセはただ、黙したまま小さく首を振った。気にしていない、という意味だろうか。
沈黙の狙撃手、という彼の二つ名が、ツァウベルンの脳裏に浮かんだ。それは、じっと気配を殺す忍耐強さだとか、真っ直ぐに狙い定める静けさだとか、そういった狙撃手としての資質について語られているものだと思っていたのだが、もっと端的に彼の性質を表しているのだとようやく気づく。
ツァウベルンはひとつ咳払いをして、不自然にその場におりた空白を振り払った。
「それで? 私に何か用事かな?」
主に頼んで人払いをした屋上に今は二人以外の影はないが、当の主が場を後にして半刻ほど、そろそろ誰かが戻ってくるだろう。
ツァウベルンに促されてようやく、ビュクセが口を開く。
「帰った方がいい」
抑揚の少ない声で、そう言った。
「ここにいるのは危険、だと」
「……危険?」
目を細めて、ツァウベルンが繰り返した。それはツァウベルンにとっても予想の範疇の言葉ではあったが、敢えて踏み込んで問い直す。
「この問題に首を突っ込むのが、かな?」
「……この戦いも危険なら、この城に居ること自体も、決して安全とは言い難い……。ここには素性の知れぬ者も多く、御身に、もしも万一のことがあっては、と……」
与えられた台本を読むように、一語一句を確かめながら、ビュクセはゆっくりと告げた。ツァウベルンは口元に笑みをのせ、小さく首を傾ける。
「それは、ゲシュッツ君が?」
「…………」
ビュクセは口を噤み、言っていいものかどうか逡巡するようにしばらく黙り込んだ後、やがてどちらの命がより上位かと気づいたのか、ようやくそっと頷いた。
その変化の少ない、けれど確かに僅かずつ揺れ動く百面相に、ツァウベルンはいちいち目を引かれて、思わず小さく笑った。
「ふふ。やっぱりきみはマジメだ。おもしろいね!」
ビュクセは変わらず、何を褒められたのかわからない様子で、黙ったままツァウベルンを見ている。
ツァウベルンは肩を竦めて、先程よりずっと気になっていた疑問を口にした。
「それにしても、どうしてきみが? こういった交渉事には、悪いけれど、とても向いているようには思えないが?」
「……好み」
小さく呟かれた言葉に、ツァウベルンが首を傾げる。
「なんだって?」
「好み、だろうから、と……」
「…………」
「意味は、よくわからない、が……」
答えるビュクセの声は、困ったように弱々しく途切れた。ツァウベルンは目を瞠ってビュクセの顔を見つめ、それから。
「……っはははははは! それをゲシュッツ君が? いや、違うな。それはミーネ君だ、そうだろう!」
突然、発作のように笑い出したツァウベルンを、怪訝な目で見ながらも、ビュクセはこくりと頷いた。ツァウベルンはまた一層おかしそうに笑い出す。
「わかっているようでわかっていないなあ、彼らも! 私がこんな好みの子を目の前に、おめおめ国に帰るわけがないだろう! いやそれとも、本心では私にここに留まって欲しいと思っているのかな?」
苦しそうに目じりに溜まった涙を拭いながら、思いついたその思考を辿るように虚空に目を向けた。
「確かに私がいた方が本国とのやりとりも何かと便利だろう。いざと言うときには、私の力で軍の一部も動かせる。が……そんな回りくどい画策をするタイプでもない、か」
まるで知らぬ仲でもない、それこそ隊長であるゲシュッツが直談判に来た方が早い。そう結論がついたところで、沈黙を保ったままじっとツァウベルンに視線を向けているビュクセを振り返った。
「いや、変なことを言ってすまないね。もちろん、君たちが私の身を案じてくれていることはわかっているよ」
「……では、このまま本国に」
「まあ、少し落ち着きたまえ! そもそも私もまだ、ここに留まるなどとは一言も言っていないじゃないか」
言葉を遮られてまた口を噤んだビュクセは、どこか疑わしそうにツァウベルンを見る。ツァウベルンは苦笑を浮かべた。
「カナイ君との話も途中なんだ。ここで結論を待つと言った以上、反故にして勝手に帰るわけにもいくまい。カナイ君がどんな結論を出すかもわからないし、それを聞いて私がどう思うかもわからないし、またそれに対しカナイ君がなんと答えるかもわからない。ほら、今からそんな心配したって仕方がないじゃないか!」
「けれど……」
「もちろん君たちの気持ちはしかと心に留めておくよ。私も危険なことは出来れば避けたい……おや!」
どこまでが本音なのか分からない曖昧な言葉の途中で、ツァウベルンがビュクセから視線を外して声を上げた。軽やかな足音をたてて、城の主が階段を駆け上って来た。
「あれ、ビュクセじゃん」
「カナイ君!」
屋上に立つビュクセの姿に、カナイは珍しそうに目を向けたが、ツァウベルンに声を掛けられてすぐに視線を動かした。ツァウベルンが笑顔を浮かべて手を振った。
「思ったより早かったね! 結論は出たのかい?」
「ああ、あんまり待たせても悪いしな」
ツァウベルンが視線で合図を送るより早く、ビュクセは静かに身を翻し、カナイと入れ違うように城内へと戻っていった。その弁えた行動も、やはりマジメだなあと、ツァウベルンは微笑ましく思う。
それから、カナイの手にした書物に目を向けた。そこに、彼の出した結論があった。


踊り場に佇むビュクセに気がついて、ツァウベルンが階段を下る足を止め、悪戯を見つけられた子どものように曖昧に笑った。その表情だけで、彼の選んだ答えはビュクセに伝わった。小さく、ため息をつく。
ツァウベルンは肩を竦め、開き直ったようにビュクセに向かって口を開いた。
「何かあれば護衛を頼むよ。そのくらいは付き合ってくれるだろう?」
仕方なく、ビュクセは頷く。
「……命令ならば」
「命令? まさか! 私はライテルシルトから来たツァウベルンという者だ。きみに命令する権限など持ちあわせてはいないさ」
一段ずつゆっくりと階段を下りて、ビュクセの立つ踊り場へと足を進め、ツァウベルンは楽しそうにそんなことを宣言した。ビュクセはよくわからない理屈に少し呆れて、ひとまず思いついた指摘をする。
「……偽名……」
「ああ、確かに偽名だね! けれど偽名ということは、何者でもないということでもある。私はただのツァウベルンだ、ここではそれでいい」
「では……」
にこりと笑うツァウベルンに背を向けて、今度はビュクセが続く階段を下り始めた。後ろから、ツァウベルンの足音がついてくる。
「護衛も、必要ないな」
「……これは一本取られたなあ。きみもなかなか言うね!」
虚を付かれたような短い空白の後に、変わらずに楽しそうな声が続いた。ビュクセはもう一度、ため息をついた。それから、仕方なくまた、口を開く。
「必要があれば、呼んでくれ」
「え?」
驚いた声とともに、後ろの足音がぴたりと止んだ。数段降りたところで、ビュクセは振り返った。ツァウベルンが不思議そうにビュクセを見下ろしていた。
「それは、命令じゃなくても護衛をしてくれるということかな?」
彼がなんと言おうとビュクセにとっては彼は貴人であるし、命令ではなくという意味は理解しがたかったが、護衛を買って出ようというのは間違いではなかったので頷いた。それから、理由をそっと付け足した。
「……任務に、失敗した」
「なん、だって?」
「帰るように、説得を……出来なかったのは、俺の、責任だから」
ツァウベルンは意味を飲み込もうとするように難しい顔で黙り込み、やがて不意に、吹き出した。
「ははははははは! ほんっとうにマジメだなきみは! ははは、いや、もっ、もちろん褒め言葉だとも!」
褒めているといいながらしつこく笑い続けるのはどういうことかと思いながら、ビュクセはまた、口を開く。
彼の本名も、騙るその偽名も、口にするのは憚られて、呼び方に迷いながら。
「……貴方、の、ほうこそ」
ツァウベルンはぴたりと笑いを収めて、目を瞠ってビュクセを見た。何もなかったことにして本国へ帰ることが出来なかったのは、そういうことなのだろうとビュクセは思う。
ツァウベルンは口元を緩めると、小さく、はにかんだように笑った。


ビュクセは言質をとられたので必要がなくても呼ばれると思います。

ツァウベルンは言葉もたくさん出てくる人だけど、その裏側でもっといろんな複雑な思考が飛び交っている人だろう、というのを書きたかったんですが私の筆力では表せませんでした。もっとかっこよく書きたいよツァウベルン。
あとツァウベルンはゲシュッツとミーネとはもともと面識があって、ビュクセとは初対面、が私の中での設定なのですが、そういう自己設定は公式でなんか出る前に吐き出しておこう、っていう。

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