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空想デイズ

期間限定(?)幻水ティアクライスのプレイメモ&呟きブログ。 女性向けの腐った視点が含まれますのでご注意下さい。 ロベルト贔屓。

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傷あと/ツァウビュク

先日のツァウベルン考察(いや全然考察してないですけど)から引き続き考え、やっぱりきっとツァウベルンがひとりで調査に動いていることも、なのにED後にはビュクセを傍に置くことに決めたことにも、意味はあるんだよなあと思って、思っただけで萌えました。
萌えるままに、ちょっと頑張ってツァウベルン寄りの視点で書いてみました。むずかしい・・・。
時期的にはツァウベルン加入後間もないくらいのつもり、です。

見上げるほど大きな獣の身体が、力を失ってどさりと倒れ、砂埃を巻き上げた。
「――よっしゃあ!」
「よっしゃじゃない! 好き勝手突っ込みやがって、もうちょっと考えて動け、バカカナイ!」
「なんだよ、ロベルトー。倒したんだからいいじゃねえか!」
ぎゃあぎゃあと騒がしい少年二人を横目に、ツァウベルンは黙々とライフルを担ぎなおすビュクセに近寄った。
「ビュクセ君」
「…………」
寡黙な狙撃手は、無言のままツァウベルンに顔を向ける。その左腕を、少し強引にツァウベルンが掴んだ。
「何を……」
「やはり。怪我をしているじゃないか!」
怪訝そうに問うビュクセの声を遮るように、強い語調で指摘する。手首の内側に細く鋭く赤い傷。滲み出た血はすでに乾いて固まっていた。いつのまに出来たものなのかは、よくわからない。
けれど、ほら、とツァウベルンが再度その傷を示しても、ビュクセは表情ひとつ変えず、不可解そうに口を開いた。
「……大した怪我じゃない」
「そういう問題じゃない。治療を……」
「頼んでいない」
短い拒絶の言葉を告げて、ビュクセは鋭くツァウベルンの手を振り解いた。背後でロベルトと言い争っていたカナイも、さすがに気がついて振り返った。
「どうした? 何かあったのか?」
「ビュクセ君が怪我をね。いや、酷い傷ではないが、一応治療を」
「必要ない」
もう一度、簡潔にビュクセが言い切った。
「……カナイ君。悪いけれど、先に行ってくれるかな」
「は?」
「薬があれば置いていってくれ。彼の傷の手当てをしてから後を追う。なに、すぐに追いつくさ」
「不要だと言っている」
「…………」
頑なに拒むビュクセに対し、ツァウベルンも怯む様子はなく、カナイに向かって手を差し出した。カナイはひとつ溜め息をついてから、おくすりと書かれた包みをひとつ、ツァウベルンに向かって投げた。
「依頼はこなしたから後は帰るだけだしまあいいけど、とりあえず喧嘩すんなよー」
どちらが年長だかわからない言葉をかけて、カナイは踵を返した。ツァウベルンは苦笑を浮かべて、心配には及ばないよ、とその背中に答えた。カナイに呼ばれたロベルトが、短い一瞥だけをツァウベルンとビュクセに残し、カナイの後についていく。
ふたりの後ろ姿をしばらく見送って、ツァウベルンは改めてビュクセに向き直った。
「さて……」
言葉と同時に腕を伸ばしたが、ビュクセは即座に身をよじるようにしてその手を避けた。左側を半歩引いて、ツァウベルンから距離を取る。
「腕を、ビュクセ君」
「断る」
即答した。あまりの頑迷さに、さすがにツァウベルンも少し戸惑って、手の中の包みを弄ぶように弾ませながら、小さく息を吐いた。
「傷口に薬を塗るだけだ、別にそこまで嫌がるほどのことでもないだろう? それとも、私が毒でも塗りこもうとしていると思っているのかな?」
「……そういうわけではない」
「では、何故? 理由を教えてくれないか」
「理由というほどのことは……ない。この程度の怪我に、治療は必要ない。先ほどから、そう言っている」
彼にしては長いセリフをゆっくりと喋り、ビュクセはそれきりまた口を噤んだ。
「えーと……」
ツァウベルンは頭の中でその内容を整理して、ひとつの結論に辿り着く。
「それは簡潔に言うと、薬がもったいないということ、かな?」
「…………」
ビュクセは、もったいないという言葉の意味を吟味するように数秒考え、それからこくりと頷いた。ツァウベルンは膝の力が抜けそうになるのを、なんとか堪えた。
が、考えてみれば単純なことではあった。確かに、ビュクセの言うとおり、彼の怪我そのものは、大騒ぎするほどのものでもない。戦場においては、食料であれ薬品であれ、物資は貴重なものだ。物資を無駄に使うな、とは、軍人ならば当たり前に受けている教育だ。ビュクセはただ、忠実にそれを守ろうとしているだけなのだろう。
(それならそう言えば……と、彼に望むのも、酷なのだろうな)
ツァウベルンは小さく苦笑を浮かべる。
「君の言いたいことはわかった。けれど、私もただの擦り傷ならここまでしつこく治療を勧めたりはしないさ。その傷、銃を構えたときに擦れるのだろう。僅かだが、庇うような動きになっている。そのままではそのうちに、他の部分を痛めるよ」
「……城に戻れば、自分でなんとかする」
ツァウベルンの指摘は図星だったのだろう、ビュクセは僅かにバツの悪い顔を見せながら、けれど頑として治療の手を受け入れようとはしなかった。
重ねて説得を試みようとツァウベルンは口を開きかけたが、静かに続けられたビュクセの言葉に、思わず声を発しないまま再び閉じた。
「貴方の手を、煩わすほどのものではない……」
視線はまっすぐにツァウベルンを射抜いている。そういうことか、とツァウベルンは納得する。
(相手が私だから、か)
それは純粋な敬意や好意ではなく、ただ彼の知識の中で、ツァウベルンが高貴な、敬うべき相手であるからにすぎないだろう。それでも。
(すがすがしいな)
ツァウベルンはそっと、口元に笑みを乗せる。身分の差に、媚びる事も、へつらう事もしない。ただ、あるがままに。
きっと彼は、無口で気難しいと評されることも多いだろう。けれど本当はそうではなく。
寡黙で真面目、忠実で、真摯……。
それは、信じられる誠実さ、なのかもしれない。
(……いや、駄目だ)
その誘惑をツァウベルンは瞬時に断ち切った。簡単に信用してはいけない。背中を預けられる相手を、真の休息の場所を、どれだけ欲していても。いや、欲しいからこそ。
最後まで見極めて、選ばなければいけない……。
「そうか、それでは仕方ないな!」
ふっと肩を落として、ツァウベルンが言った。ようやく諦めたかと、ビュクセも一時、身体の力を抜いた。瞬間に。
瞬きよりも早いスピードで、ツァウベルンがビュクセの左脇に移動した。突然のことに反応が出来ずにいるビュクセの左手を、有無を言わせずツァウベルンが掴み。
おもむろに、手首の内側に唇を寄せた。その傷を辿るように舌を這わせる。
「な、なにを……」
さすがに動揺した声を上げ、ビュクセは腕を引いた。が、意外なほど強い力で拘束されている。
「何って、消毒だよ。君がどうしても薬は嫌だというから、仕方ない」
「だからと言って……」
「心配はいらないよ。舐めれば治るという言葉も昔からあるくらいだ、きっと効き目はあるだろう! ほら、もっときれいに舐めておけば……」
「わ、わかった!」
ツァウベルンがもう一度、傷口に唇を近づけようとするのを、ビュクセが慌てて止めた。ツァウベルンが目を上げて、ビュクセを見る。
「治療を受ける……薬を……」
怯えたような声でビュクセが言った。ツァウベルンは小さく肩を竦めてから、その手をぱっと離した。
「残念だなあ! ビュクセ君の傷ならいくらでも丁寧に舐めとってあげるのに」
「いや……」
「まあいい、薬をつけるから、腕を出してじっとして」
まだ警戒を露にしたまま、ビュクセがゆっくり腕を差し出した。ツァウベルンはおくすりと書かれた包みを開けて、なぜか楽しそうにビュクセの傷口に塗りこんだ。最後に、銃を操る邪魔にはならないように、布で縛って保護をする。
「よし、完了だ!」
「…………」
「ビュクセ君、こういうときはなんて言うのかな?」
「……感謝する」
まだどこか納得がいかない表情のまま、仕方なさそうにビュクセは答えた。ツァウベルンは満足そうに笑った。
溜め息をついて、ビュクセはライフルを抱え上げた。先に行った二人を追いかけなければいけない。
「……ビュクセ君」
歩き出そうとしたビュクセの背中に、ツァウベルンが呼びかけた。ビュクセは黙ったまま振り返る。瞬間、ひどく真剣な顔をしたツァウベルンが、何かを言いたげに口を開いていた。
けれど、ツァウベルンは何も言葉にしないまま、首を振って笑みを浮かべた。いつもと変わらない、自信に溢れた笑顔。
「行こう、だいぶ遅れを取ってしまった! 私ならすぐにでも追いつけるが、大丈夫、ビュクセ君を置いてはいかないよ!」
颯爽と歩き出す背中に、ビュクセが黙って続いた。ツァウベルンは僅かに目を伏せて、その気配を感じ取る。
どこか居心地の良いその感覚に引き込まれそうになりながら、ツァウベルンは考えていた。
いつか、この戦いが終わったとき。彼は同じように、自分の後ろにいるのだろうか。
もしかしたら……。

彼を傍に置くことを選ぶのだろうか。
彼は、それを、望むだろうか。



はじめてツァウビュクぽいセクハラ話を書けた気がします!(要点はそこか?)
ビュクセ回復時の声→「感謝する」字→「頼んでない」は、頼んでないと思ってるのに口ではちゃんとお礼を言っているわりと躾の良い感じなんだろうなあと。
本気で頼んでないと思ってるんだけど突っぱねるとツァウベルンにセクハラされるので仕方なく受けている、みたいな!(笑)

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