ツァウベルンは無事に仲間になりました。かっこいい・・・大好き・・・。
有能で貴族で変人なんて私のツボを突きすぎです。
で、記念(?)のツァウビュク。
仲間入り記念なのに、たぶん時期は決戦後。
三発の弾丸が、的代わりに据えた木片に立て続けに飛んでいく。的は捉えたが、中心からはわずかにずれている。狙いを修正し、四発目を撃とうとした瞬間に、人の気配に気付いてビュクセは反射的に振り返った。
気配を頼りに位置を読み、振り向きざまに照準を合わせる。即座に引き金を引いたが、狙ったはずの相手はすでにそこにはいなかった。
常識を外れた早さで距離を詰めてくる。けれど、焦っては照準が乱れる。短く、呼吸を止める。
先を読んだつもりの次の銃撃も、あっさりとかわされた。相手は、一瞬で目の前に迫っている。
「……っ!」
近すぎる。とっさにハンドガンを抜いて構えた。圧倒的に遅れを取っているのは承知の上で、引き金を絞る。その時にはもう当人の姿はそこにないだろうと思ったが、予想に反し、ツァウベルンは身動きせずにその場に留まっていた。傍らを、弾丸がすり抜ける。
「いい腕だね」
間近を掠めた銃弾に顔色ひとつ変えず、ツァウベルンはのんびりと、そんな感想をこぼした。標的を外したビュクセへの嫌味かとも思ったが、視線はビュクセを通り越し、先ほど撃ち抜いた木の的へ向いていた。
「…………」
ビュクセはハンドガンを構えなおした。銃口に目を向けて、ツァウベルンが苦笑を浮かべる。
「そんなに警戒されると困ってしまうな。何もしないから、銃を降ろしてくれないか」
「…………」
馬鹿げていると、ビュクセも思う。もともと、害するわけにはいかない相手だ。本気で撃ち抜く気などないことは、きっとツァウベルンも最初からわかっている。それでは、脅しにすらならない。意味のない、ポーズだけのやり取り。
まるで、何かを試しているようだ。自分も、彼も……。
ビュクセは黙ったまま銃口を下げた。ツァウベルンはわざとらしく、安堵したような息を吐いた。
「実はカナイ君にも怒られてね。君に撃たれそうになったって。怪我もなかったみたいだし、当たらなかったならいいじゃないかと思うのだけれどね」
ツァウベルンは再び、撃ち抜かれた的に目をやった。
「動いている人間を外せるなら、止まっている的に当てるのは簡単だろうね?」
「…………」
ビュクセは答えなかった。否定をしたいわけではない。肯定の必要もないと思ったのだ。
返答がないのはツァウベルンにも予想の範疇だったのか、こだわる様子もなく、黙ったままのビュクセに小さく笑った。それから少し目を伏せて、彼にしては冷たい感じのする、静かな声で呟いた。
「君はきっと、暗殺者に向いているよ」
「……なっ……!」
突然の、予想外の言葉にビュクセは言葉を詰まらせる。ツァウベルンは表情を変えずに、薄い笑みを張り付かせたまま、淡々と続けた。
「一撃必中の射撃の腕と、感情を表に出さない冷静さ。それに、その寡黙なところも、機密を守るには大事な要素だ。見る者が見れば、私と同じことを言うと思うよ」
「俺は……!」
そんなつもりはない、とビュクセが言うより早く、ツァウベルンは首を振って遮った。
「君がどう思おうと、軍属である以上、上層部の命令には逆らえないだろう。私の見る限り、君は優秀な軍人だし……であれば尚更、君も命令には従うはずだ」
「…………」
「ゲシュッツ君も君を守ろうとはするだろうね。でも、彼も組織の中の一人に過ぎない。所詮、上の命令には背けない。君を守るほどの力はない」
まるで、決まった未来のように――倒したばかりの敵が甦ったように、そうなるしかないと言い切る口調。すべての反論を封じられて、ビュクセは力なく口を開く。
「だから……?」
受け入れて暗殺者として生きろと言うのか。そんな命令を、彼が、するとでもいうのだろうか。
問い返されたツァウベルンは、どこか嬉しそうに、口元の笑みを深くした。静かだった声にわずかな熱が宿る。
「だから、君の本当の価値もわからないようなどこかのつまらない頭の固い連中が、そんな下らないことを言い出す前に……」
ツァウベルンはまっすぐにビュクセを見て、誘うというよりは強引な、やはり命令と言った方が妥当な言葉を口にした。
「軍などやめて、私のものになりたまえ!」
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